この時期になると毎年ベートーヴェンに会ったような気持ちになる。Salon Classicで海野、宮下の両氏が奏でるベートーヴェンチェロソナタ全曲が聴けるからだ。チェロとピアノが対等に語り合い、勇壮に響く響きの中にも前半には喜びや力強さが、後編には哀愁、瞑想的な静けさがある。全曲とはベートーヴェンの生涯を貫いたチェロ曲で、何も見ず全5曲を無念無想の表情で弾く海野の姿そのものに私は元気溌剌とした若いベートーヴェンから病に侵され哲学的、瞑想的になったベートーヴェンの姿を重ね合した。